王室御用達であるコーリンウッド社製
ジェイムス・サミュエル・ベル(JB)とルイス・ウィルモット(LW)作
素材 | 製作年 | 大きさ |
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シルバー、ダイヤモンド、エナメル | 1897年 | 縦9cm、横6cm、厚さ2cm |
ジョージ5世って?
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ジョージ5世
George V, George Frederick Ernest Albert -
英国王室を
現代に繋いだ英国王【在位】1910年~1936年
『ジョージ5世』
ルーク・フィルデス画、1911年頃
当時はまだ皇太子だったアルバート・エドワード(後のエドワード7世)とアレクサンドラ妃の次男として1865年6月3日に生まれました。出生時には父と兄に次いで王位継承権第3位の地位でした。
1910年、父エドワード7世が亡くなり、兄はすでに病気で他界していたことから、「ジョージ5世」として王位継承しました。同時にイギリス・アイルランド等の海外自治領の国王と、インドの皇帝に就任しました。
ジョージ5世が王位についた時代は、ロシア革命が起きるなど、多くの王室が滅んだ時代でした。そんな中、ジョージ5世は英国王室を現代に存続させ、国民にとても人気のある国王でした。
国王4世代:ヴィクトリア
エドワード7世、ジョージ5世
エドワード8世
ジョージ5世には6人の子供がおり、シンプソン夫人との結婚で王位を捨てた(いわゆる「王冠をかけた恋」)で有名なエドワード8世が、ジョージ5世の長男です。長男が王位を退いたために、次男のジョージ6世が、次に王位に着きました。その娘が、現在の国王エリザベス女王になります。ジョージ6世は、映画「英国王のスピーチ」でモデルになった国王です。
ジョージ5世は、ヘビースモーカーだったことでも知られており、そのためこのシガレットケースが作られたと考えられます。1936年、肺気腫などの病気を患い、70年の生涯を閉じました。
シガレットケースの特長①
- ヨーク家の白薔薇
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『ヨーク公』とは、国王の次男に与えられる公爵位です。ジョージ5世も次男であったため、ヨーク公が与えられました。よって、ヨーク家の紋章である白バラが中心に施されています。花びらはエナメル、中心はダイヤモンドです。
この紋章に使われているテューダー・ローズ(英: Tudor rose)は、イングランドの伝統的な花です。
- ガーター勲章
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ジョージ5世は、1884年にガーター騎士団に任命されました。このガーター騎士団の紋章が、ヨーク公の白薔薇を囲んでいます。ガーター勲章には、この騎士団のモットーである"Honi soit qui mal y pense" (悪意を抱く者に災いあれ)と刻まれています。
紋章の上には、王冠が描かれています。
August 1897 | このシガレットケースは、1897年にビクトリア女王在位60周年を記念して作られたものです。 |
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シガレットケースの特長②
- 中にタバコが入ります
- 蓋を開けるとタバコが入るようになっており、内側はタバコが汚れないように、金メッキが施されています。
- 刻印が入っています
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- ①作家のイニシャルであるJB LWと掘られています
- ②横向きのライオンと正面を向いているライオンは「London」を意味しています。
- ③「b」は「1897年」を意味しています。
- 上部がマッチ入れになっています
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ケースの上部には、マッチを入れるケースになっており、マッチをすると火がつくように、凹凸になっています。
- 製作会社の名前が入っています
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専用のケースを開けると、蓋の裏側に製作した会社の社名
「COLLONGWOOD&CO to the Royal Family」と入っています。
- 紐は火縄です
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横についている紐は火縄で、紐に火をつけてライターの役割をします。紐を下に引いて中に収めれば、自動的に火が消えるようになっています。紐は取り替えられるように作られています。
- ここに火をつけたら
- 下から引っ張ると
- 密封されて火が消えます
技術的に優れているところ
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蝶番(ちょうつがい)が閉じた状態のときに、まったく凹凸がなく、よく見ないとその線が見えないほど完全にフラットな状態になります。 |
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板金技術 | 打ち出しの技術で、この厚みのあるシルバーをここまで滑らかに作り上げるのは、相当の技術が求められます。 |
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日本皇室とのつながり
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1921年、当時皇太子であったら裕仁親王は、ヨーロッパ各国を歴訪されました。英国では当時国王であったジョージ5世に、手厚く歓迎されました。
当時英国の国王であったジョージ5世の温かいもてなしは「終生忘れない」と、昭和天皇は繰り返し話されていたそうです。
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昭和天皇とジョージ5世
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ガーター勲章は英国の最高勲章です。また、ガーター騎士団Knights of the Garter)団員の規定の服装・装身具の総称で,左足の膝下につけるガーター,マント,首飾り,星章などから成ります。
外国人への叙勲は、キリスト教徒の君主が原則となっています。キリスト教徒以外で騎士の称号を受けているのは、明治・大正・昭和の3天皇と現在の天皇陛下だけです。
日英同盟の関係で明治天皇に贈られ、以後、大正、昭和の各天皇にも贈られ、今上(きんじょう)天皇も1998年(平成10)のイギリス訪問時に贈られています。
特に、昭和天皇のガーター勲章は、日英開戦とともにその勲章は剥奪されました。しかし、その30年後、再び渡英されたときに回復しました。670年に及ぶガーター勲章の長い歴史のなかで、一度剥奪された名誉が回復した事例は、昭和天皇ただひとりだけです。
現在のガーター騎士団の団長はエリザベス女王です。